ご挨拶

このたび,第24回日本行動医学会学術総会の大会長を仰せつかりました。皆様に謹んでご挨拶申し上げます。

日本行動医学会は,主に,心理行動科学系,社会医学,臨床医学の3つの領域の専門家が集まり,健康の維持増進,疾病の予防や診断・治療について,学際的に取り組む点に大きな特徴があります。年に1回開催される学術総会では,多領域の研究者,治療者,実践家が集まり,大会長が設定するメインテーマを中心に活発な議論がなされます。学術総会での交流は,実践課題への解決,新たな研究課題の探索につなげるための貴重な機会となっています。

学術総会の大会長は,各領域が持ち回りで担当しており,今年は心理行動科学系の私が担当することになりました。メインテーマは,私の専門領域の1つである産業保健と関連づけ「働き方の見直しと行動医学」としました。わが国では,持続可能な働き方に向けた動きが加速しており,「働き方改革」の名のもと,長時間労働対策,両立支援などが積極的に検討されるようになりました。このような動きの中で,人びとの健康の維持・増進,幸福(well-being)の向上に行動医学はどのような貢献ができるのか,本学術総会にてみなさまと一緒に検討したいと考え,各種講演とシンポジウムを企画しました。

基調講演では,ユッカ・シウコサーリ駐日フィンランド大使をお迎えし,フィンランドにおける持続可能な働き方についてお話いただきます。特別講演では,パラリンピアンの田口亜希氏をお迎えし,すべての人が働きやすく暮らしやすい環境,スポーツと健康とのつながりについてお話いただきます。その他,教育講演では,腰痛とメンタルヘルスとの関連(松平浩先生),ウェアラブル機器を用いた行動の評価と変容(荒川豊先生)など,最新の知見をお話いただきます。さらに,国際行動医学会理事長(Frank Penedo教授)による特別講演では,がんサバイバーの支援についてお話いただきます。その他,シンポジウムとして,働き方改革,両立支援,ストレスチェック制度,身体活動をテーマに取り上げ,多様な働き方における行動医学の役割について,多面的,学際的に議論します。

本学術総会は,私が大会長としてだけでなく,日本行動医学会理事長としても新しい試みを行っています。たとえば,私が理事長就任時の重点項目とした週末開催の見直しについて,2日目(土曜日)のプログラムを半日で終え,働き方の見直しにつなげるようにしました。また,育児中の研究者を支援するため,託児所を設置し参加しやすい環境を整えました。さらに,若手研究者の育成を図るためのワークショップを,研究推進委員会,将来構想委員会を中心に準備しています。

産業保健や行動医学の研究者だけでなく,働き方,健康の維持と増進にご関心をお持ちの産業保健スタッフ,経営者,人事担当者など多くのみなさまのご参加をスタッフ一同お待ち申し上げております。

第24回日本行動医学会学術総会
大会長 島津明人
(北里大学一般教育部人間科学教育センター教授)